釜南生徒会誌「新汐」復刊第1号

 昭和47年(1972年)3月1日,釜石南高等学校生徒会誌「新汐(にいじお)」復刊第1号が発行されました。同年3月7日の卒業式に間に合わせるように急いで編集され,その年の卒業生を含む全校の生徒,教職員に配付されました。40年も前のものですが,故あって大切に持っていたものです。
 表紙は,美術科の高杉先生が図案したもので,「青い円は,新しい汐(うしお)がわき上がってくる様を表現した」と言って,油絵具の匂いのする美術準備室で原画を渡してくれました。
 ページをめくると,斉藤校長の「ソクラテス曰く,『汝自身を知れ』と。」で始まる巻頭言,加藤教頭からの「復刊を祝う」と題した祝辞があります。
 続いて,新旧生徒会長のあいさつ,教員の「私の高校生時代」,教員や生徒による随筆,生徒会やクラブ,クラスの紹介,生徒たちによる写真やイラストもあり,52ページしかない薄い印刷物ですが,もりだくさんの内容でした。当時の校風や生徒たちの気質,取り巻く社会情勢なども理解できる冊子であると思います。
 しかし,加藤教頭が,23年ぶりの発刊について「折角ともした火を燃やし続ける意欲を,後に関係してゆく人たちに植え付けてほしい」と締めくくった祝辞で,『創業は易く,守成は難し』という古いことばを引用し,続けることの難しさを説いていましたが,誰もがそのことばをよくかみしめることなく,翌年の卒業時に第2号をもらうことはありませんでした。

当時の校舎(裏側)と甲子川
校歌は,現釜石高等学校に引き継がれている

 1988年に発行された「釜南70年史」に以下のように記されているように,その後復刊第2号も発刊されているようですが,復刊第1号はどこにも誰にも保管されている様子はなく,これが現存する最後の1冊かも知れません。


『ところで,昭和47年度には,生徒会誌『新汐』が創刊号として発行された。創立50周年記念回顧座談会「釜南五十年雛の日記」によれば,昭和23年3月に,県立釜石中学校の生徒会誌『あゆみ』,さらに,25年7月に,県立釜石高校の『新汐』が発行されたことになっている。つまり,47年に出た『新汐』は,正式には,「復刊第1号」ということになるだろう。現在,学校には「復刊第2号」からしか残されていない。昭和26年から46年までの生徒会誌の事情については不明である。』