インディ・ジョーンズ in 釜石鉱山

 8月に釜石鉱山の坑道見学会がありましたので,参加してみました。

 今から約300年前の享保12(1727)年,盛岡藩出身の本草学者「阿部友乃進(とものしん)」が仙人峠で磁鉄鉱を発見しました。
 130年後の1857(安政4)年に,大島高任が大橋に洋式高炉を建設し,12月1日(鉄の記念日)に日本初の高炉法による連続出鉱に成功しました。
 釜石鉱山の歴史の始まりです(詳しくはページ下のリンク先サイトを御覧ください)。

 釜石南高等学校1年時の担任は地学の吉丸先生でした(今でも健在とのこと)。独特な語り口で有名で,授業中は落語を聞いているようで楽しく,一生懸命勉強しました。
 教科書の「鉱床のできかた」の単元では,「スカルン」という言葉が出てきました。石灰岩にマグマが接触し,マグマに含まれる成分が石灰岩と反応してできた鉱物は「スカルン」と呼ばれています。

 旧釜石鉱山事務所に掲示してある解説板には,「マグマ(白亜紀花崗岩)が石灰岩を含む中・古生代の地層に陥入してできた釜石鉱山は,鉄鉱石を算出する日本最大のスカルン型鉱床である」と書かれており,一度鉱山の中を見てみたいと思っていたところでした。

乗車したトロッコと坑口

乗車したトロッコと坑口

 見学会は,釜石市が小学生以上の市民向けに企画したもので,夏休み期間中に数回開催されていました。
 場所は,釜石市甲子町大橋で旧国道仙人トンネルの手前にあります。テレビやラジオの電波が届かない所で,まして携帯電話は「バリ0」です。磁鉄鉱の影響で方向感覚が狂うかも知れません。

 スタートは,「550m坑道」入口で,電気式トロッコ列車に乗り,坑口から約3km,20分ぐらいかかって「仙人秘水」の源泉に到着しました。
 ここは,北上高地の大峰山(標高1147m)山頂から600mの真下です。
 坑内は,温度がセ氏10度,湿度90%で,肌寒いくらいでした。壁は,堅い花崗岩(マグマが深い所で固まった岩石)です。

目指すは,未知の世界

目指すは,未知の世界

鉱脈の案内図

鉱脈の案内図

 釜石鉱山の説明のあと,またトロッコに乗り,一度バックして,途中のポイントで切り替わり,また前進して別の線を走り,採掘坑に着きました。

 ここでは,産出される鉱石の説明と,鉄鉱石の採掘方法の説明がありました。
 鉱石は主なもので,鉄鉱石(磁鉄鉱),柘榴石(ざくろいし,ガーネット),白色石灰岩などです。石榴石と鉄鉱石は,ゆで卵の白身と黄身の関係で,白身に当たる石榴石があると掘り進んでいけば必ず鉄鉱石が見つかるそうです。

電気石,褐鉄鉱と石榴石,白色石灰岩

石榴石,褐鉄鉱と電気石,白色石灰岩


 そのあと,横坑の掘削の方法の説明がありました。まず,写真「横坑の掘削」の右側の坑奧の面の円の中にハッパを差し込んで火を着け,爆破します。その後機関銃のような削岩機や砲身の長い大砲のような大型削岩機で砕き,ショベルローダのようなタイヤ着きの車でトロッコまで運びます。
 次に縦坑の掘削方法の説明でした。縦坑に足場を組み,縦三つに区切って1区画ずつハッパで砕いていく「三区画切上」という方法の説明がありました。

横坑の掘削

横坑の掘削

縦坑の掘削「三区画切上」

縦坑の掘削「三区画切上」

グラニット・ホール

グラニット・ホール

 最後は,作業員の休憩所だった広間に行き,その奧の「花崗岩場音響実験室(グラニット・ホール)」でレコード鑑賞をしました。
 この空間は,吸音率が低くて残響が長く残るため,コンサートなどにも使われています。
 歌などを披露すれば,珍しい石がもらえるようです。
 今度挑戦してみよう。

釜石鉱山の紹介(釜石鉱山ホームページから)→http://www.sennin-hisui.com/kozan/index.html
旧釜石鉱山事務所(釜石市郷土資料館ホームページから)→http://www.city.kamaishi.iwate.jp/kyoudo/kouzan/kouzan.html(現在閉館中です)