春の海2-弁天島海岸の思い出

弁天島(左)と弁天島海岸(奥にもう一つ砂浜がある)

弁天島から見た奥の砂浜(キャンプした所)

 弁天島海岸は,大槌町の吉里吉里半島の北側にある砂浜です。
 箱崎半島の千畳敷(春の海-御箱崎の千畳敷(3月31日掲載))と同じ花崗岩質の海岸で,岩でできた弁天島を挟んで左右に砂浜があります(砂は,花崗岩が風化したものです)。
 干潮の時は島と浜がつながって歩いて行けるようになりますが,満潮になると島にも奥の砂浜にも行けなくなります。
 後背地の山も花崗岩でできており,沖の海底にも花崗岩が続いています。水中めがねで海底を見ると沈没船のように見えるところもあり,驚いた記憶があります。

津波の跡の残る弁天島(後ろ海は船越湾)

 弁天島は,2年前の震災時には,てっぺんに生えていた大きな松の木の半分くらいまで津波が来たようで,漁具が枝に引っかかったままになっています。木々や草花が枯れ,上部に積もっていた土も流されて,岩だけの小さな島になってしまいました。
 きれいだった砂浜も,流木や壊れた小舟がまだ残ったままになっています。
 昔のように海水浴ができるまでは,かなり時間がかかりそうです。

弁天島海岸の思い出
 この浜は,中学校1年生の時にクラスの夏の遠足で来たのが最初で,その後も何度か友人と海水浴に来たところです。岩手大学に就職してからも,同僚とキャンプに来たことがあります。

 一番の思い出は,高校2年生の夏休みに中学からの友人2人とキャンプに来たことです。
 国鉄山田線の吉里吉里駅からは徒歩30分ぐらいかかります。昼前に到着し,おにぎりを食べたり,泳いだり,走ったり,学校の話をしたりして,夕方まで楽しく過ごし,奥の浜にテントを張りました。
 しかし,夜になって天気が急変し,激しい雨が降り出しました。雨漏りや浸水をよけながら一睡もできないまま明け方になり,雨が小降りになったころを見計らって撤退しました。
 一番列車で釜石に戻り,友人宅でテントを洗って物干し竿に広げ,乾かしました。その日は,逆に洗濯日和の快晴でした。
 眠くなったので友人と分かれて家に帰り,荷物を調べると,英語の教科書は赤インクがにじみ,「夏休みの友」も悲惨な状態でした。その夏もまた,宿題をまともに提出することはできませんでした。

「遠い海の記憶」
 青い海を見ながら風を受けると,いつも思い出す歌があります。ちょうど40年前の夏に放送していた少年ドラマシリーズ「つぶやき岩の秘密」のテーマソング(石川セリの歌った「遠い海の記憶」)です。
 この少年ドラマシリーズは,1972年1月から始まり,おもしろい作品がたくさん放送されました。第1作が「タイムトラベラー」で,筒井康隆原作の「時をかける少女」をドラマ化したものです。この作品は,その後,何度も映画化やアニメ化されています。

原作本
(新潮少年文庫,
1972年発行)

 1973年7月に放送された「つぶやき岩の秘密」は,新田次郎の原作で,2歳の時にある事故(事件)で両親を失った少年が,小学6年生から中学1年生にかけて体験する海での出来事の話です。
 つぶやき岩は,耳を当てると波の音が母親のつぶやきのように聞こえる不思議な岩で,ある事件の鍵を握っている岩でした。
 祖父母など周囲の大人達に見守られながら,その事件を少年一人で解決することで,ようやく両親の死を受け入れられ,少し新しくなった自分を感じるようになったというストーリーでした。
 海の映像がとてもきれいで,心に残っているドラマです。

 「遠い海の記憶」は,曲は,スローテンポのボサノバのリズムで,思春期独特のけだるさを感じますが,サビの部分では「今だ,見つめておけ」と命令形になり,自分に言い聞かせるような大人びた力強さも感じ,このドラマにふさわしい歌になっています。

 大人になった今(まだなり切れていないのかも知れませんが),あのころ見つめていたはずのふるさとの本当の姿とは何なのだろう,あの輝く青い海が私に教えてくれたものは何だったのだろうと,この歌を聴きながらいつも思います。